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小池博史ミュージックコレクションの中から選択した曲もしくはアーティストについてのエッセイ。
単なる音楽批評ではなく、情景をも喚起させる、演出家ならではの考察。
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『音楽の情景またはレコード棚の記憶から』
vol.44 Jポップでただ一人
いわゆるジャパニーズポップスというのは、ほとんど聴かないで過ごしてきた。浮き浮きしないから聴かない、それだけのことなのだが、何故だろうと考えてみると、いくつか理由が浮かんでくる。僕は歌謡曲好きで、特に昔の歌謡曲は大好きだった。しかし、日本のフォークソングはまったく好きになれなかったし、Jポップもまた、一部を除くと、声量が足りないとか、音楽性が借り物に感じられたりして、どうしてものめり込めないできた。
しかし、その中で唯一、延々と聴き続けてきたのが吉田美奈子。もう30年以上も聴き続けている日本人音楽家である。そんなポピュラー音楽の音楽家は日本人では誰一人としていないから非常に希少な存在なのが彼女なのである。
そういう存在だから、かなり知られているのかと思いきや、若者たちに聞いてみると、ほとんど知らないと言う。吉田美奈子知らないの?とビックリだった。僕にとっては、日本人のポップ界のディーバみたいな人だから、吉田美奈子は聴いた方が良いよ、と事あるごとに言ってきたが、実際に聴いたという人はあまりいない。現在ではちょっと古いのだろうか?いやいやそんなことはない。吉田美奈子くらい音楽性の高いポップ音楽をやり続け、なおかつアルバムの構成、完成度が高いレベルを保ち続ける音楽家はそうそういないのである。だいたい、日本のJポップ音楽家のアルバムはたいていは1枚、聴き通せない。飽きてしまう。とんでもなく散漫な曲が必ずと言っていいほど入っている。それがない。トータルなアルバムを作れる非常に希有な存在だと言ってよい。
彼女は大瀧詠一、山下達郎などのアルバム参加したのがきっかけで、デビューしたらしいのだが、少しは分からないでもない。その時代、つまり1970年代の匂い、つまりある種、社会的意識よりも個人的な感傷や華やぎや希望、苦悩などを軽やかではないにせよ、ポップ音楽として、つまりフォークソングよりは少しはしみたっれていないポップな意匠を纏って登場したのが「はっぴいえんど」で、このメンバーは細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂・・・このような人たちで構成されていたということで、なんとなく雰囲気は漂ってくると思う。これらの人たちとの交流の中から出てきたのが吉田美奈子であった。
高校の友だちで「はっぴいえんど」大好き少年がいた。彼は「はっぴいえんど」をコピーしては歌ってくれたし、彼のうちに行くと、しょっちゅう「はっぴいえんど」を聴かされ、仕舞いには僕自身「風街ろまん」というアルバムは購入してしまったのだったが、結局、「はっぴいえんど」は、さほど好きにはなれなかった。四人が出会えた日本ロックの奇跡という人が多いけれど、松本隆による歌詞はちょっぴり面白い部分があったのは認めるとして、歌はうまくないし、音楽性だって、ビートルズあたりの奇跡に比べたら比較するのもおこがましい、と思ってしまう。全体に漂う薄暗さを感じていたのは僕だけではないと思う。だから、未だに高い評価を受け続ける「はっぴいえんど」の評価は僕には理解できないのである。その後の、大瀧にせよ、細野にせよ、松本にせよ、仕事自体は、みんな大きくここから飛躍して、遙かに良い仕事をしたと思っている僕としては、「はっぴいえんど」はどうにも、ただの若かりし頃の音楽への足がかりだったように思えてならない。
しかし、彼らの影響を受けて楽曲を作り始めたという吉田美奈子は、始めから輝いて見えた。「扉の冬」「フラッパー」など、初期のアルバムは、日本のフォークソングの雰囲気を歌詞には残して、明るさがなく、少し後にデビューを飾った荒井由美(現、松任谷由実)に比べてしまうと大きな相違がある。彼らは1953年生まれと54年生まれだから、ほぼ同じ年だ。荒井の、へったくそな歌だけど、あっけらかんとした雰囲気はその時代にマッチして、瞬く間に時代の寵児へとのし上がっていく一方、吉田は時代関係なく、独自の路線をそれからずっと貫き通すことになっていく。吉田の歌詞とは異なって、音楽自体はジメジメとした、しみったれた感じがせず、きわめて透明な感触と声は細いが伸びがあって、歌としても魅了させるという特性を最初から感じさせていた。
同じ年齢ということだと、山下達郎も1953年生まれだ。そして山下も軽くて繊細な恋の歌を歌い、時代を担うようになっていった。だから、この頃の人たちは、軽さがひとつの鍵だったのだと思う。一方、吉田は決してそうではない。
美奈子好きの人たちの多くは、吉田は最初から完成された存在だった、と言う。しかし、僕にはそうは思えない。年を取って良くなっていった人である。若いときの音楽は若さの良さよりも、まだ若いがゆえのあらゆる面での未成熟さが先に立ってしまい、魅力はあるが、大きく引きつける吸引力を持つまでは至っていない。若さの薄っぺらい味わいが強く残っているような感触だ。それでも僕はついつい、ジャズにのめり込みつつも、聴きたくなって聴いていたのだが、30歳になる頃から艶が出てくる。さらに年を取ると、暗い感情でさえも、自身の中でコントロールして、表出してくるようになった。人間が生きるというのはどういうことかを感じさせる強さが出てきたのである。
吉田美奈子という人は、ずっとマイペースで、自身の音楽を貫き通してきたように思う。周囲に惑わされず、よって、常に高度な音楽を作り続けられたと言えるだろう。
なかなか日本人の音楽家でここまで豊かにポップで、素敵な音楽を作り続ける人はいない。それこそ駄作がない。だから、ここで取り上げるにしても一枚というのは難しい。1980年以降のアルバムはどれも好きだ。ただ、彼女には大ヒットもない。それが良かったのかも知れないな、とは思う。
今宵もじっくりと聴き惚れてしまいたい。
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小池博史撮り下ろしフォト作品より。
空間に対する独自の視点と鋭い反射神経で、瞬間を捉える才能を発揮。優れたスナップシューターと評価されている。
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* 沖縄シリーズ
〜 正月編 〜
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写真をクリックすると、大きなサイズで見られます。 |
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最新情報のお知らせや、多様な仕事のあれこれを紹介。
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童話シリーズ”第3弾!
『パパ・タラフマラの白雪姫』
全国ツアー中!まもなく東京公演!
photo:Hiroshi
KOIKE
白雪姫(あらた真生)と継母(白井さち子)、ちょっと変な王子と小人たちが織りなす不思議な森の神話的ストーリー。
ただいま九州上陸中。宮崎公演後は、いよいよ東京公演です。日本全国各地で公演して、ますます練り上げられた舞台に、乞うご期待!
1月15日(土)宮崎 メディキット県民文化センター
1月20日(木)-24日(月)東京 あうるすぽっと
1月28日(金)愛知 武豊町民会館ゆめたろうプラザ
【東京公演情報】
<日程>2011年1月20日(木)-24日(月)全7公演
20日(木)19:30開演
21日(金)19:30開演
22日(土)13:30開演 /18:00開演
23日(日)13:30開演 /18:00開演
24日(月)13:30開演
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受付開始は開演の60分前、開場は開演の30分前です。
※上演予定時間は約70分です。(休憩なし)
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開演時間を過ぎてのご来場は、指定席通りのご案内ができかねる場合がございますので、ご了承ください。
<会場>あうするぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
〒170-0013 東京都豊島区東池袋4-5-2 tel: 03-5391-0751
<料金>全席指定席
前売一般4,200円
学生・65歳以上・身障者割引=3,500円
小学生1,500円
※当日券 各券の500円増
※7歳以上のお子様からお楽しみいただけます。
<チケット予約>
●パパ・タラフマラ
予約フォーム(PC)https://ticket.corich.jp/apply/22742/
tel:03-3385-2919 E-mail:ticket2010@pappa-tara.com
●チケットぴあ
tel:0570-02-9999(Pコード:407-009)
●e+(イープラス)
http://eplus.jp(web / 携帯)
●Confetti(カンフェティ)
http://confetti-web.com tel:0120-240-540
<お問合せ>
パパ・タラフマラ tel:03-3385-2919
E-mail:ticket2010@pappa-tara.com
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発行・H island編集 大久保有花
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