今月の表紙 パパ・タラフマラ舞台写真シリーズ『パパ・タラフマラの白雪姫』 Photo:Hiroshi KOIKE
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「パパ・タラフマラの白雪姫」で最後だ



『パパ・タラフマラ舞台写真シリーズ』
パパ・タラフマラの白雪姫

小池博史が語るパパ・タラフマラ作品について

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「パパ・タラフマラの白雪姫」で最後だ

  パパ・タラフマラファイナルフェスティバルももう3演目が終了し、残るは1演目「パパ・タラフマラの白雪姫」のみとなってきた。「三人姉妹」、「島〜Island」、「Ship in a View」と実施し、シンポジウムを開催し、いろいろなところで語り、「ロンググッドバイ〜パパ・タラフマラとその時代」を出版、DVDを14本出してきた。昨年の6月頃は、期間中に2冊、私自身の本を出したいと考えてきたが、なかなか厳しかった。とにかく時間がない中で書き綴ってきた。まだ精査する必要があり、もう少し時間が掛かってしまうだろう。だが、なんとしても今年中には2冊上梓するつもりである。
 企画を考えたのが昨年5月だから、ほぼ9ヶ月でここまでやってきている。もちろん私ひとりの力ではない。皆が力を合わせたからできることで、特に制作は必死になってやってきた。

 なにゆえに、ここまでやるのか、と問われることがしょっちゅうだった。つい先日も、アップリンク社長の浅井さんから、「これだけ作品を立て続けにできるところなんてないんだから解散する必要があるのか?」と問われた。しかし、状況はあまりに悪い。ただ、その酷すぎる、ということがどういうことかわかっていない人が非常に多い。これが厄介だ。なんとなくの絶望感はある。‘なんとなく’こそが本当に危険なところであろう。状況を変える、というのは何も舞台芸術界を変える、ということだけではない。状況を打破するための動きを取らなければ、今の日本は確実に沈むしかなくなる。それはこれから生まれくる子供たちの未来を考えたときに、私たちは大きな禍根を残すということだ。
 みんなで足の引っ張りあいをし、日本では狭い世間が蔓延ったまま、ほとんど変化しないまま、時代は過ぎ去ってきた。今、ここで、一石を投じなければなるまい。なんとしても一歩でも先に進むために。その気概こそが一番重要なのだろうと思うのだ。それがなければ今後はないだろうとの危機感を強く持っている。

 さて、「パパ・タラフマラの白雪姫」。パパ・タラフマラにとって、「パパ・タラフマラの白雪姫」は最新作に限りなく近い。実は、一年前には、この後の展開を考えていた。シアター1010で実施予定だった「Between the TIMES」という作品である。この作品は結果的にできなくなって「Ship in a View」に取って替わられたけれど、いつかそのうち制作することにはなるだろう。台本もすでに上がっている。
 パパ・タラフマラ第十期に突入した上での第一作として考えていたのが、「Between the TIMES」で、解散に向けて動いていた時に岡本太郎美術館側から、やらないか?と打診があり、制作し、実施した作品が「Between the LINES」というパパ・タラフマラ最小規模の最終作品であった。この作品は、もちろん「Between the TIMES」に繋がるべく、そのステップとして制作している。

 「パパ・タラフマラの白雪姫」は、神話的視点で作品を制作しようと強く意識して制作した作品群の最後に位置する。人間・動物・異界の存在・・・さまざまなものを等価に見ながら制作しないと、もうコノ世はだめなのではないか?と思っていた。が、3・11があって、本当にダメだと思った。「Between the TIMES」は、どこかしらそういう事を予期していたと思う。昨年の研究生のために制作した「BT」という作品では、ガイガーカウンターの音が鳴り、防護服を着た人々がゼエゼエ言うところから始まって、最後は海に飲み込まれていくような終わりだったのだ。この台本を一昨年の12月に書き(ちょうど「パパ・タラフマラの白雪姫」の公演が始まった頃のことだ)、3・11の時もまた、稽古をしていた。つまり、危機的状況が強く底辺に存在していた。私自身はそれが原発や津波を想定して作っていたわけではなく、何か不穏な予期せぬ出来事によって、時代が変革させられるイメージがあった。この出来事とだぶった。「Between the TIMES」はさらに拡大したものとして提示しようと思っていた。が、3・11は、それを超えて、臨界点に近づいているという確信に変わり、確信はさらなる動きを作り出さねば、という強い意識を私に芽生えさせたのだった。

 神話を超えた神話的作品を目指すべきとの考え方も否応なく、変更させられた。もともと、「パパ・タラフマラの白雪姫」で第九期の新たな神話を作り出すという方向性を持った舞台は終わりとは思ってはいた。この時代、‘神話’という一種の感性的ロジックを用いるのではなく、はるかに大きな体感的舞台である必要があり、それを提示できなければ、何も始まらないかもしれないと思ったことが大きな原因だった。感性に強烈に訴えかける作品としての提示こそが望まれると考えた。
 今、パパ・タラフマラとしての「Between the TIMES」の制作は叶わなくなった。その意味では、「Between the LINES」が何と言っても、もっとも新しい私自身の考えを形にしている。だが、あくまでも小品であり、私にとっては「Between the TIMES」へ向かう途上にある作品と考えていたものだから、パパ・タラフマラとしての最後のフルスケール作品は「パパ・タラフマラの白雪姫」ということになる。

 この作品をパパ・タラフマラの最後の最後にもう一度、行う。
 これからの事はいろいろと今後、考え、実行に移していこうと思っている。が、パパ・タラフマラというカンパニーがあったことを強く覚えておいて欲しいと願う。前進に前進を続けた、30年間続いてきたカンパニーの最後の姿だ。その輝ける成果をしかとご覧あれ。
 
 また、このメルマガも次回で最後となる。7年に渡って続けてきた。半分近くの期間は月に二回ずつ、年間24本書いていたから、総計で120〜130本は書いてきているはずだ。字数にすれば原稿用紙で800〜900枚くらいにはなるだろう。
 今後、どうするのか、まだ明確には決めていない。次回までに少しでもご報告できれば、と考えている。

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パパ・タラフマラ舞台写真より。

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パパ・タラフマラ 舞台写真シリーズ
 パパ・タラフマラの白雪姫


Photo:Hiroshi KOIKE
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パパタラ ファイナルフェスティバル 
いよいよラスト
『パパ・タラフマラの白雪姫』

  『島〜Island』『Ship in a View』公演が終り、残すは『パパ・タラフマラの白雪姫』のみとなってしまいました。
  1月公演とは作風がガラリと違いますが、変幻自在なパパタラらしい恐くておかしい、不思議な白雪姫の世界です。
童話と侮ることなかれ!他では絶対に観られない舞台です。

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パパ・タラフマラの白雪姫

パパタラ初の全国ツアー作品!子供も大人も楽しめる童話シリーズ。
パパ・タラフマラ童話シリーズ第3弾。童話という誰にも知られた素材をこれまでに無い手法で全く新しく作り変え、子供も大人も楽しめる突き抜けた娯楽作品へと昇華。ひとつの神話的世界を舞台上に現出させることで、老若男女問わず多くの観客を魅了してきました。
作・演出・振付:小池博史
出演:あらた真生 白井さち子 菊地理恵 橋本礼 南波冴 荒木亜矢子 石原夏実 小谷野哲郎 アセップ・へンドラジャッド
<公演日>2012年3月29日(木)〜31日(土)
●3月29日(木):19:30〜 
●30日(金):13:00〜 ,19:30〜★ 
●31日(土):13:00〜★ ,17:30〜
<料金>全席指定席
前売一般=4,500円 学生・65歳以上・身障者割引=3,800円
当日券 各券の500円増 
<会場>北沢タウンホール(北沢区民会館)

★…終演後アフタートークあり
【30日(金)】19:30〜 トラフ建築設計事務所
【31日(土)】13:00〜 萩尾瞳(映画演劇評論家)

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【お問合せ】TEL:03-3385-2066 (ファイナルフェスティバル実行委員会事務局)

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【読者のみなさまへ】
  いつもご愛読、誠にありがとうございます。 小池博史のメールマガジン「H island」は、2005年1月より7年間に渡り、毎月発行してきましたが、次号(3月10日発行)Vol.101をもちまして、終了させていただきます。
  毎号楽しみにしてくださっていた読者の皆様には大変申し訳ございませんが、パパ・タラフマラ解散をひとつの区切りとして、決断いたしました。何とぞご了承ください。

H island編集 大久保有花

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パパ・タラフマラ
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小池博史 公式サイト
   
 

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発行・H island編集 大久保有花